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なんというのか、その。
偉大なる小松左京先生の遺した恐ろしくリアリティに富んだSF小説が、こじんまりしたハリウッド映画の焼き直しに落ち着いた、という物悲しい気分に浸れる2006年版の映画「日本沈没」

近年、ヨーロッパへのセールスを強く意識している作品には舶来至上主義的色合いを抑制する様子も見受けられることから、この作品の製作当時の風潮が、特にハリウッド映画への憧憬に傾倒していたという見方もできる。

題材は、長くSF作品は小説として一流たり得ない、という根拠のない差別抗い続け、膨大な知識と構成力をふんだんに注ぎ込んだ小松左京先生のリアリティ溢れる小説のなかの一作品。

2012年の現在から見れば、予言の書と呼んでも過言でない。
一流のSF作家は預言者である。

そして、その偉大なる予言の書を下地にして、富野由悠季氏へのオマージュやら、福井晴敏氏への愛着やら、そこはかと匂いたつ日本人らしい感性への執着は嗅ぎ取れるが、いかんせん、製作当時の感性で商業映画として堅実な結果を収めるためには、だ。
だから、こうなった、と言わざるを得ない。

スリルとスペクタクルが彩る純愛映画。
て、ところか。
きっぱりと恋愛ものだと割り切ってしまえば、人情は随所に溢れていて好ましい作品なのかもしれない
しかし、まぁ、今生の別れでも若い男女が体で愛し合わない、この頑なな純愛描写には納得いかんが。
だって、動物として不自然だろう。

もちろん、細部面白い点は多々ある。
福田麻由子ちゃんの当時12歳の若さながら、役作り基盤とした何かを誇張することのない芝居が光っていたり。
及川光博さんが、案外、本気で役者稼業にのめり込んでいて、ぜんぜん『ミッチー』でない様子が面白かったり。
國村隼さんが嫌味な役柄の、嫌な台詞をイヤになるくらいの甘い声で滑らかに聞かせてくれるのが、あまりにも見事だったり。
遠藤憲一さんが、怖い人かと思えば真面目で紳士で、ちっとも目立たない役柄だったり。
柄本明さんがちょこちょこご登場なので最後に大活躍しそうでいて、全く活躍なさらなかったり。
富野遺伝子を継ぐ男、『作家』福井晴敏さんが、ほんとうに端役の役者にみえたり。
富野由悠季御大が、撮影現場で本物の高僧かと勘違いされたがために、待ち時間も演技続行だったというエピソードが笑えたり。

しかしながら、これは地道な手法でキチンと造った特撮が売り物の、紛れもない只の恋愛映画だ。
そして、大地真央さん銀河万丈さんバリの演説力求めようもない

どうしたらいいんだ?
悪口言うつもりで観たわけでもないのだが。

『小松左京』への期待が大き過ぎたのか。

まぁ、オマケ要素部分で自分を納得させるなら、わざわざご出演の富野由悠季御大へのオマージュとして、ガンダマーにだけは伝わるポリシーが二つ。

専門職の登場人物が行う、業務遂行時の指差喚呼頼もしさ
コイツはなかなか、リズム感を問われるんだよ。

性差区別の徹底と、母性へのゆるぎない畏敬
命を賭してしか、何かを守ることができない。
は命を繋ぎ、自らそれを導くことができる。

ほらほら、やっぱり主人公とヒロインは結ばれておけばよかったんだ。
彼女が新しい命の芽を守りながら救いの手を待つ人々を導いてくれれば、死に行く者にも未来があった。

ラブシーンなんかなくとも、結ばれたという描写にはできたよな。

なんだか、色々とやり切れん言い様になってしまった。
2000年代中ごろとは、そういった時代だったのか。

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